仕事を楽しんでいる人には敵わない… /『ガード下の赤ちょうちんから、愛を込めて。』no.12

『ガード下の赤ちょうちんから、愛を込めて。』vol.12
今日もガード下にある、壁は油まみれの安い焼き鳥屋では、ジャケットにデニム、白髪ではあるものの、ヒゲをたくわえた男性と、少し弱々しい、線の細い若者が、少しばかり重たい雰囲気の中で話をしているようです。会話のやり取りから白髪の男性は社長、その会社の若手社員と言った様子です。ちょっと覗いてみましょう。
さて、こういうケース、世の中に沢山あるのではないかな?と思います。
悩んでいる本人(今回の場合は若手社員)も、どうしたらいいのかわからない。
悩みを打ち明けられた上司(今回は社長)も、どうアドバイスしたらいいかがわからない。
いや、悩みを打ち明けられた上司すらも、この若手社員のように、自分に合っているんだろうか…と悩んでいたり…。
「好・知・楽(こうちらく)」という論語の教えをご存知でしょうか?
「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
という論語の教えを一言で表したものが、「知・好・楽」です。
これを仕事に例えると、
その仕事を知っているだけの人は、仕事を好きな人にはかなわない。
さらにその仕事を好きなだけの人は、仕事を楽しんでいる人にはかなわない、
ということになります。
よくやりたくない仕事、自分にとって嫌な仕事でも、修行だから、勉強だから、まずはやってみろ、という人もいます。
それもよくわかります。
しかし、僕は、やりたくない仕事、自分にとって嫌な仕事を無理してやれ、とは言いたくありません。
ただしその判断は、一旦やってみてから、とは思いますが…。
今回のケースは、本人自体は「やりたい」と思っている職種で、その中にある「仕事」自体が楽しくなくなってきている、ということです。
この若手社員の話を紐解いていくと、ルーチンワークに追われて仕事がつまらないと感じているのではないか?と仮説を立てられます。
つまらないのはなぜか?義務感で業務をこなしているだけだからです。
しかし視点を変えると、そんな仕事をきちんとこなせている。ここに誇りを持てるようになれば、仕事が好きだと感じるきっかけになると思うのです。
例えば、あのイチロー選手も、ルーチンにとてもこだわりを持っていました。
● ホームの試合がある日は必ずランチにカレーを食べていた
● 球場入りから、試合に入るまでの作業、練習、試合終了の作業までがルーチン化
打席に入るまでの作業もルーチン化
です。では、イチロー選手はなぜ、こんなにもルーチンを続けていられるのでしょうか?
根底にあるものは、「絶対的に野球が好き」というものでしょう。
私は、それにもう一つ。ルーチンを続けた先に、結果があったから、だと思います。
イチロー選手は数々の偉業を成し遂げています。
ルーチンを続けることが成果に結びつくということを知っているために、ルーチンに誇りを持っているのではないか、と思うのです。当然、最初からこのルーチンをしていたわけではないでしょう。さまざまな工夫や改善に取り組んで、結果として目に見えてきたから、やっているのだと思います。
詳細は省きますが、京セラの創業者で、日本航空を立て直した立役者の稲盛和夫氏も、「会社を好きになったこと、仕事を好きになったこと、 そのことによって今日の私がある」と言っています。
今回のこの若手社員にイチロー選手や稲盛氏の事例を出してもピンとは来ないと思います。
それよりも、いまつまらないと思っている仕事に誇りを持たせるようにする。
小さなことでも良いので、成功体験を積ませることで、今の仕事が、他人の仕事から、自分の仕事になっていくと思うのです。
「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
ぜひ、「知・好・楽」を覚えておいていただき、社長が、社員のみなさんが体現していれば、周りも巻き込まれていくのではないかと思います。
佐藤 洋介(メンバーページへ)
大学(日本史専攻)を卒業後、採用コンサルティング会社・ソフトウェア開発会社を経て、2018年にフリーランスへ。「人材の成長を促し、組織の成長サイクルを加速する」をモットーに、性格タイプ理論をもとにした人材採用領域、研修領域でビジネスを展開。近年は対話型組織、人間学にも注力し、組織に所属する人たち一人ひとりが輝ける場づくりを実践している。…続きを読む
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